こちらへ戻ってくる少し前、
神田の古本まつりに出かけた。
お茶ノ水から坂下までは、学生時代を過ごした
思い出深い町だが、最近は、日本へ帰ってきても、
訪れる機会は減った。
すずらん通りや靖国通りにずらっと並んだワゴンの中を、
つづけざまにのぞいていく。
そこからは、今はいない父の蔵書と同じ香りがしてくる。
そして、今は無い、実家のあちこちに置かれた
大きな本棚の色合いを思い出す。
そうした記憶が徐々に色あせてくるのを
引きとめるように、ワタシは、これからもここを訪れるのだと思う。